離婚の主な方式として、(1)夫婦間の協議による離婚、(2)調停による離婚、(3)裁判(訴訟)による離婚などが挙げられます。夫婦間での話し合いがうまくいかない場合には、裁判所の手続である(2)(3)を利用することになりますが、原則として訴訟を起こす前に調停を申し立てる必要があります。
調停を行う場合、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、夫婦間の合意で定めた家庭裁判所に申立をしなければなりません。夫がどれほど遠方に居住していても、特に合意がない限り、夫の住所地を管轄する裁判所に申立を行う必要があります。
調停は、各当事者が裁判所に設置された調停委員会に出席し、そこで各自の言い分を述べ、調停委員の意見も参考にしながら、お互いに歩み寄って現実的な解決策を探る手続です。事案にもよりますが、解決までには複数回の調停委員会に出席することになります。このため、申し立てた裁判所が遠方にある場合、調停に出席するだけでも金銭的・時間的に大きな負担となっていました。
平成25年1月から、新たに家事事件手続法が施行され、調停においても、電話会議システム・テレビ会議システムが導入されることになりました。これは、遠方にいる当事者が電話回線を通じ、音声や画像により調停に参加する仕組みです。これによって、遠くの管轄裁判所に出頭しなくても調停手続きを利用することができるようになりました(このシステムの利用を認めるか否かは個々の事案ごとに裁判官の判断に委ねられています)。
注意しなければならないのは、離婚を成立させる場面においては、必ず当事者が裁判所に出頭し、裁判官や調停委員の面前で意思表示をする必要があるということです。婚姻という身分関係の解消に係る重要な事項ですので、このような規定が置かれています。
ご質問のケースは慰謝料や養育費に関する合意ができないということですので、それだけを対象に申し立てるのであれば、最後まで電話会議システム等を用いて調停を成立させることが可能です。しかし、これらが調停離婚に付随して申し立てられたものである場合には、主体である離婚そのものの成立には裁判所への出頭が必要ということになります。
どうしてもご自身で裁判所へ出頭することが困難であるという場合には、「調停に代わる審判」の発動を促すなど、他の手続の利用の検討も必要かもしれません。また、調停で合意が成立しない場合には、調停に代わる審判がなされない限り、離婚訴訟の提起という流れになります。詳しくは、お近くの司法書士などの専門家にご相談ください。