新規事業に進出する際には、事業分野の選定(市場の将来性や既存事業との相乗効果)、資金調達の問題など、様々な経営上の判断をしなければなりません。また進出の形態も様々で、子会社の設立や他社の買収によって行う場合もあるでしょう。しかし、ここではそのような経営判断はクリアされ、会社本体として新規事業を行うとの前提で、必要な手続などを取り上げます。
まず、自社の定款に掲げられている事業目的の内容を確認してみましょう。新たに進出すると決めた分野は、会社の目的の範囲内のものでしょうか。もし既存の目的に収まらない場合は、新規事業を行うために、目的の追加が必要です。
事業目的を追加する場合、登記や許認可の手続において問題のない表現にしておかなければなりません。登記の場面においては、近年は包括的な表現も認められるようになりました。つまり1個の目的で比較的幅広い内容の事業がカバーできるということです。但し、あまり漠然とした内容の目的にしてしまうと、許認可申請の際に支障がでることがありますので、十分検討しましょう。
事業目的追加のためには、株主総会を開催して、定款変更の決議をする必要があります。決議をするのは、定時総会でも臨時総会でも構いませんが、いずれの場合も、通常の役員選任や決算承認よりも要件の厳しい決議(特別決議)が必要です。具体的な要件は会社ごとに異なり、各社の定款に規定されていますので、そちらをご覧ください。
株主総会で定款変更決議が承認されたら、その議事録を添えて、2週間以内に目的変更の登記を申請します。高知県内に本店がある会社の場合、申請先はすべて高知地方法務局(本局)です。
次に、許認可について確認してみましょう。建設業や飲食店をはじめ、事業によっては監督官庁の許可、認可や届出等が必要になるものも数多くあります。新たに行う事業がそうした許認可の対象となる場合には、事業の開始に先立って、監督官庁に申請を行うことになります。これを怠ると、営業停止の処分や刑事罰を受けることがありますので注意してください。
この他、新規事業に進出して新たに人材を雇用するなら、社会保険の手続が必要となります。中小企業については、一定の要件のもとに助成金が受けられる場合もありますので、そちらも検討してみてはいかがでしょうか。