不動産などの遺産を所有していた人が亡くなった場合は、特に遺言がなければ、その共同相続人全員の合意で遺産の分け方を決めて、遺産である不動産の名義を変更したり、預貯金の解約払戻し等の手続をすることになります。ところが、その相続人の中に、認知症により、自分の判断で遺産の分け方を決めることができない人(以下、「Aさん」と言います。)がいる場合は、Aさんの代わりに遺産の分け方を判断して決めてもらう人(またはAさんの判断を検討の上、同意をする人。以下、「成年後見人等」と言います。)を家庭裁判所で選んでもらう必要があります。
この成年後見人等を選ぶための申立ては、一定の範囲内の親族(例えば、Aさんの配偶者・子・兄弟姉妹・甥姪・従兄弟・両親等)やAさん自身は、することができます。申立てがあると家庭裁判所は、申立てに至った事情やその他の色々な事情を考慮の上、成年後見人等を選びます。(まれに、選ばれずに申立てが却下されるときや、選ばれる前にAさんが亡くなってしまうときもあります。)
その後、共同相続人とAさんの成年後見人等とで、遺産の分け方について協議して、分け方を決めていくことになります。なお、このときに、Aさんの成年後見人等は、Aさんにとって不利益な遺産の分け方をしたり(またはその不利益な遺産の分け方に同意したり)することは、原則的にできませんので注意が必要です。(成年後見人等には、Aさんのために事務を行うことが法律上義務付けられています。)
無事、遺産の分け方が決まり、必要書類が調えば、それに基いて、遺産である不動産の名義を変更したり、預貯金の解約払戻し等の手続を行うことができます。